読売新聞 2007/05/21掲載
◇ニュー・リーリー
私は中国囲棋協会五段の女流棋士で、1989年に来日し、現在は呉清源先生の秘書として先生の著書の編集やビデオの作製などのお手伝いをさせていただいています。
今回から4回に分けて中国の少年少女の囲碁事情について、ご紹介しようと思います。
中国では古来「琴棋書画」が君子のたしなみとされてきましたが、そのなかの「棋」は囲碁のことです。
しかし、囲碁は音楽や書画と違って勝負のかかわる競技なので、現在の中国ではスポーツの一種とされています。その点から、中国棋院が組織され、その下に囲棋(囲碁)協会と中国象棋(将棋)協会、国際象棋(チェス)協会、コントラクトブリッジ協会の4協会がマインドスポーツとして国家体育総局に所属しています。そして、各地に棋院が設立されており、たとえば、私の故郷である黒竜江省ハルビン市には黒竜江棋院があります。
黒竜江棋院は行政面では黒竜江省体育局に所属しており、技術面では中国棋院の指導下にあります。各地の棋院は行政面で各地の体育局に所属している中国独特の仕組みに留意しておいてください。
ともあれ、現在、中国囲棋協会に所属しているプロ棋士は四百数十人おり、トップ棋士はほとんど首都の北京に在住していますが、多くのプロ棋士が各地に分散して生活していて、それぞれの地方の棋院や青少年宮(青少年の習い事の施設)などに勤めていたり、また、自由に囲碁を教えている人もおり、それらの人たちが地方の囲碁の普及に非常に大きな役割を果たしています。
ご存じでしょうが、中国は「一人っ子政策」をとっており、また、著しい経済発展による社会格差も大きくなってきています。そのためでしょうか、英才教育が流行しています。「望子成龍」、つまり、子供の出世を望むという成語がありますが、少年少女の空前の囲碁ブームもその一環かもしれません。
(中国囲棋協会五段)
当囲碁サロンレッスン風景